「こんや、12時、だれかが...」
僕は手紙を何度も裏返してみる。しかし、それ以上の文章は書かれていない。
「だれかが...何をするっていうの?」 真理が心配そうに覗き込んでくる。
「さあ...このペンションの誰かが、深夜に何かを...」
その時、食堂から物音が。 恐る恐るドアを開けると、そこには...香山夫妻の姿だ。
目があってしまった。
「え、見た」
「実はね、主人が今日の深夜に」
僕と真理は息を呑む。
「...こっそりダイエットを始めようと思ってたの。でも手紙を書いている途中で、うちのが『お腹すいた』って言い出して...」
「待って」真理が突っ込む。 「なんで脅迫状みたいな書き方したんですか!?」
「だって普通に書いたら、緊張感なくてすぐ挫折しちゃいそうで...」 奥さんは肩をすくめる。
その横で香山(旦那)さんは、こっそりカップ麺を空けようとしていた。
「あなた!」 「がはは...しかたないやろ、腹がへってはなんとやら...」
結局その夜、食堂では深夜の懇親会が開かれることに。 おかげで香山さんのダイエット計画は早々に頓挫した。
僕はというと... 「透・・・探偵気取るの、そろそろやめたら?」と真理に呆れられた。
窓の外では雪が静かに降り続いていた。 そして僕らは、カップ麺の湯気の向こうで笑いあっていた。
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