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【架空ガンダム】機動戦士ガンダム月面のムーンシア:第1話 月面への誓い

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月明かりに照らされた広大な月面。白色のドーム型建造物が連なる、巨大な月面都市「ムーンシア」。

その中心部に位置する研究所の一室で、少年レイ・アーミテージは熱心に調整作業に取り組んでいた。

「やっぱり動かない・・・」

レイはため息を吐きながら、手術台のようなベッドに横たわるヒューマイノドのメカニズムを見つめる。この機体は、彼が父母から受け継いだ遺産であり、夢でもあった。

両親はかつて、ムーンシアで先進的なヒューマノイド開発に尽力していた研究者だった。 しかし、10年前の事故で二人とも命を落とし、以来レイは祖父のアレン博士に育てられてきた。

「私もあなた方のように、この機体を動かせるようになりたい」

レイはそのヒューマノイドに手を添える。 かつて父母が愛おしげに触れていたであろうその表面を撫でるが、その機体は冷たいままだ。

このヒューマノイドは、ムーンシアの未来を見据えた希望の構想だった。地球から月への移民が始まったのが西暦2045年。地球型のヒューマノイドも月面の環境開発にだいぶ投入をされてきたのだが、その当初から、不可解な誤作動が多く目立っていた。

地球と異なる重力環境下での作業が、イレギュラー因子を生み、ヒューマノイドが誤作動を起こすということが、言われていたが、その一方で地球と同じ重力に調整された住居(ドーム)内でも、誤作動は発生していた。

父母は、別の仮説を立てた。研究所の外のメンバーにも、レイにも、その仮説について多くを語る前に、両親は亡くなってしまったためその仕組みの本質はブラックボックスになっていたが、幸い、「ムーンライト・システム」と名前を付けられたその駆動系のシステムは完成しているように見えた。

しかし、誰がそれを操作しても一向にヒューマノイドは動かなかった。

レイは、この研究所に入所してからずっと、両親のその研究を引継ぎ、その駆動系のシステムに、人間よりやや大きめのヒューマノイドの機体を繋ぎ、動作するよう調整を行っている。

「レイ、そこにいるのか」

扉が開き、白髪の老人が入ってきた。

「ああ、おじいさん。だめだな動かない・・・なにかシークレットキーがあるんだきっと。このルナの秘密さえ分かれば・・・」

ルナとは、父母のプロジェクトの名前だ。そして・・・

『レイ・・・呼びましたか?・・・』

調整を行っていた端末の内部に、少女の姿がデジタル的に表示される。「ルナ」という音声に、自分が呼ばれたと勘違いして反応したらしい。両親が使っていた端末に残されていたAIボットの名前、それもルナとつけられていた。

最初はこのAIボットに秘密があるのでは、と探ったこともあった。しかし、それはよくある既製品で、これがシークレットキーになるとは考えづらい。

「このヒューマノイドの量産が叶えば、月面の開発は一気に進む。みんなが住みやすくなる」

レイの眼差しには、強い決意が宿っていた。

アレン博士はほっと笑いを浮かべる。 レイの瞳の中に、両親のそれと同じものを見つけたからだ。

「コーヒーを持って来た、あんまり根を詰めるなよ」

月の光が窓からこぼれ落ち、二人の姿に優しく満たされていく。

月面都市ムーンシア。今、新たな歴史の幕開けが、静かに始まろうとしていた。

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