
学生時代の思い出を振り返ると、何故か鮮明に蘇ってくるのが、日吉駅近くにあった家系ラーメン店での夜遅くの食事風景だ。上京して間もない頃、右も左もわからない私にとって、この店との出会いは単なるラーメン店との出会い以上の意味を持っていた。

極楽汁麺らすた
神奈川県横浜市港北区日吉本町1-5-41 阪口屋日吉ビル1F
11:30ー01:00
https://hiyoshi-shop.com/store10039.php
運命の出会い
私が初めてこの店を訪れたのは、大学1年生の春のことだった。サークルの先輩に「日吉で一番うまいラーメン」として連れて行かれたのがきっかけだ。当時の私は、それまで東京の味に慣れておらず、どこか物足りなさを感じていた。しかし、この店の濃厚なスープとしっかりとした麺との出会いは、私の「東京での食」に対する考えを一変させた。
豚骨と醤油のハイブリッドなスープは、まさに「家系」の真髄を体現していた。最初は「濃すぎるかな」と思えるその味わいが、不思議と箸が進むにつれて「もっと食べたい」という欲望を掻き立てる。一口飲んでは水で口をすすぎ、また食べたくなる。この「やめられない」感覚は、まさに中毒性と言っても過言ではない。
深夜の誘惑
特に印象に残っているのは、飲み会帰りに訪れた時間帯だ。日吉の街を彩る居酒屋での宴も楽しかったが、その締めくくりとして訪れる家系ラーメンには特別な魅力があった。アルコールで緩んだ舌の上で、濃厚なスープがより一層際立って感じられる。
夜遅くになると、店内には私のような学生たちが三々五々と集まってきた。カウンター席に座り、もくもくとラーメンを啜る音だけが響く空間。それは何とも言えない居心地の良さがあった。注文を受けると、厨房からは豚骨を煮込む香りと共に、調理人の力強い声が響く。「らっしゃい!」という威勢の良い掛け声は、今でも耳に残っている。
こだわりの一杯
この店の特徴は、何と言ってもカスタマイズの自由度の高さだった。好みに応じて、油の量、にんにくの有無、麺の硬さ、スープの濃さを細かく指定できる。私の定番は「油少なめ、にんにく多め、麺かため」。この組み合わせにたどり着くまでには、かなりの試行錯誤があった。
トッピングも充実していた。特に、ほうれん草と海苔は欠かせない存在だった。濃厚なスープに浸かったほうれん草の苦みと、パリッとした海苔の食感が、スープの重厚さを絶妙にバランスさせてくれる。
思い出の味
今でも鮮明に覚えているのは、期末試験期間中の夜更かしの後に訪れた時のことだ。図書館で勉強に疲れた体に、熱々のスープが染み渡る感覚は格別だった。その時の「救われた」という気持ちは、今でも忘れられない。
また、友人たちとの思い出も数多い。サークルの打ち上げの後、「締めのラーメン」を食べながら、その日あった出来事を振り返ったり、将来の夢を語り合ったり。カウンター席に並んで食べるラーメンは、いつも以上に特別な味がした。
変わらぬ魅力
上京して初めて出会い、心から気に入ったこの家系ラーメン。スープの濃さに最初は戸惑いながらも、気がつけば週に2、3回は通うほどの常連となっていた。「水を飲んでは、また食べたくなる」という中毒性は、まさに家系ラーメンならではの魅力だった。
今でも日吉を訪れる機会があれば、必ずこの店に足を運ぶ。店の前に立つと、学生時代の様々な思い出が懐かしく蘇ってくる。相変わらずの活気ある店内、変わらない味、そして温かみのある接客。時が経っても、この店の魅力は少しも色褪せていない。
家系ラーメンとの出会いは、私の東京での生活に深く根付いた思い出となった。濃厚なスープと、それを取り巻く様々な思い出は、今でも私の中で特別な存在であり続けている。